きものの着用機会と通過儀礼
人生の中できものを着用する機会はたくさんあります。
今はその風習は七五三や成人式くらいとなってしまいましたが、
実は、私たち日本人は人生の通過儀礼ごとにきものを着ていました。
そして、きものにはきちんとした『意味』が込められていたのです。
ご自身の通過儀礼、日本人としてきもので迎えるのはいかがでしょうか。
※参考文献:PR現代 著『だいじなこと、ちゃんときちんと。』
帯祝い〜出産
妊娠五ヵ月目の戌の日に行われるのが帯祝いです。
なぜ『戌の日』かというと、犬のお産が軽いことに由来するそうです。また、犬が人の霊魂を導くという原始的な信仰に基づいているともいわれます。
帯祝いは、昔は臨月に近親者が妊婦を招いてごちそうを振る舞うという行事もあったそうです。
夫婦同士だけでなく、両家とも和やかに行うといいでしょう。
お七夜〜お食い初め
お宮参りの初着
赤ちゃんが生まれて7日目のお七夜には、名付け祝いを行い、赤ちゃんは初めてこの世のものとなります。
お宮参りは初めて氏神様に参拝し、この土地に生を授かった一員として認めてもらい、健康と長寿を祈る行事です。一般には男の子が31日目、女の子が33日目に参拝するそうですが、30日目に有名神社へ参拝するのが最近の傾向です。
また、大人用の反物を初着に仕立てると、将来色無地のきものとして着ることもできます。
初正月・初節句
無事に成長することを願って、男の子は5月5日の端午の節句、女の子は3月3日の上巳の節句に、それぞれお祝いをします。
また、男の子は『兜』、女の子は『雛人形』を飾りますが、これは赤ちゃんに降りかかろうとする災厄を、代わりに引き受けてくれる、災厄除けのようなものとされているそうです。
七五三
三歳被布・五歳袴・七歳四つ身
七五三は、三歳の髪置き(髪を伸ばし始める)五歳の袴着(初めて袴を着る)七歳の帯解き(紐から帯に変える)に由来します。
いずれも子供の成長を願い、子供自身にもその自覚を与えるためのものです。また、子供に持たせる千歳飴には、子供が元気によく成長し長生きするように、という願いがこめられています。
十三参り
生まれた年の干支が初めて巡り13歳になった女の子が、振袖を着てお参りすることを『十三参り』といいます。
かつて13歳で一人前の女性とされていた時代に、肩上げした振袖を着てお参りをし、大人としての自覚を持たせることを由来としています。
成人式
振袖・羽織袴
成人の日は、大人の社会へ仲間入りすることを自覚するための儀式(成人式)を行う日です。
女性は振袖、男性はスーツが主流となりましたが、日本男性なら羽織袴がやはり似合います。
結婚式
訪問着・色無地
最近では嫁ぎ先にきものを持って行くという習慣は、ほとんどなくなってしまいましたが、お宮参りや七五三のときに自分だけ普段着というわけにも行かないので、訪問着や色無地のきものは持っていて損ではありません。
【訪問着】さまざまなフォーマルシーンに着ていくことができる万能なきものです。飽きのこない訪問着を1枚誂えておくだけで大変重宝します。
【色無地】紋を一つ入れることで訪問着と同格のきものになります。また、柄がありませんので、控えめで上品な装いが可能です。
葬儀
黒紋付(喪服)
お守りとしてのきもの
一般に「喪服」といわれているきものは、正式には「黒紋付き」といいます。
「モンツキ」といわれるだけに、家紋が5カ所に入っています。その昔、災いは背中から入ってくるものとされていたので、背中、両腕、旨に家紋を入れます。